プロの仕事

プロフェッショナル仕事の流儀,「勝つことよりも大事なことがある」より

 「お前の弱点はなんだ?」「あの生徒はどうしてそのポジションにいるのか?」大瀧は練習の際、徹底して生徒に質問をする。自分が答えを教えることは、極力しない。教師がすぐに答えを教えると、生徒は考える事をせず、身に付かないと考えているからだ
 その質問のしかたは、必ず一人一人の生徒に対して。全体に話しかけると、生徒たちは自分の問題としてとらえない事が多いからだ。一人一人の悩みを見つける事は時間がかかる。しかし、それでも心に届くように、大瀧は個別に話しかける。

同じく「バントはするな。ホームランをねらえ」より

どんな困難な場面でも古澤は笑顔を忘れない

 「楽しんでください」。この言葉を古澤は一日何回も口にする。実験は99%が失敗という困難な現場。1ヶ月近く、何の成果もでず、失敗が続くこともある。しかし古澤は、その失敗こそが成功への道しるべとなると考えている。
  この考えを得たのはアメリカへの留学時代。その分野のカリスマであった研究者の実験姿勢を見た時だった。器具の調整をわざとめちゃめちゃにし、そこで得たさまざまな失敗データを喜んで分析し、正解への道筋を見出していた。失敗をさまざまな方向からしゃぶりつくせば、新しい発見が必ずある。それに気づいた時こそ古澤が一流の科学者へと変わった瞬間だった。


悩む学生たちを前に古澤はやり直しを命じた

 成功に近づいてはいるが、どうしても最後までたどり着けない。そんな時はいつも、あえて積み重ねてきた成果を捨て、振り出しに戻る。一からの調整作業や抜本的な見直しを必要とする困難な道のりだが、これまでの成果に固執していては、本当の成功へは決してたどり着けないという信念があるからだ。