家具とデザイン

Y'not Report Revival」の二つのエントリーより


ふたご座の男(1)イノベーション

 家具の流通なんかを調べていると、本当にムダが多いってことがわかる。さっきも話したけれどプラスチックの金型つくるのに莫大な投資がかかるし、イス一個つくるのに2年も前から色も形も決めておかないといけないんだ。しかもイタリアでデザインしたものが、中国で製造されて、英国の倉庫で眠り、それから日本で販売される。はっきり言ってこんなプロセスはムダだと僕は思っている。

そこで、ちょっと製造プロセスについて考えなおす試みをやってみた。プラスチックを麺状の長細ーいチューブのようにして絞り出す機械をつかって、消費者が自分で好き勝手に家具をつくってみてはどうかという提案をした


もうひとつ

それからもう一つの試みとして、流通のプロセスについても考えてみた。輸送や運搬や倉庫管理のムダを省くため、イタリアのとある大きな広場に1000脚のプラスチックのイスを並べて、誰でもタダで持ち帰っていいということにした

ただし、タダで配るのはいいけど、問題は利益はどうするのかってことだ。そこで、僕は三つの方法を考えた。一つは、ネットでイスのカバーを販売すること。毎年シーズンごとにかわいらしいカバーを限定で販売する。ファッションと同じだ。カバーなら管理も包装も配送もそう大変じゃない。もう一つは、イスそのものに広告を刻印して配るということだ。これはグーグルのビジネスを借用してみた。そして三つ目は、同じイスのシリーズで限定のレア・バージョンを作って高額で売るということだ。

ふたご座の男(2)トラディション

僕は、長年使い込まれたアルテックの家具がいかに美しいかということも発見した。そこでフィンランドの学校や公共施設から、古いアルテックのイスを買い取り、あるいは中古の代わりに新品のイスと交換しながら、300脚くらいのイスを集めた。(一部略)

 アルテックはそれらを回収し、「2nd Cicle」シリーズとして再び新たな命を吹き込むことになった。今度は一脚一脚にRFIDタグを貼り付けた。タグのチップには、個々のイスの物語(Personal Story)に関するデータが記録されている。携帯電話があればイスの情報を読み取ることもできるし、新しいオーナーがさらに新しい情報を追記することもできるのだ。回収されたイスは、そうやってまた新しい30年か40年を記録することになる。

 こうした試みによって、我々は世界における消費の意味について問い、考え直すことになると思う。我々は世の中で何をつくり、何を投入すべきなのか。今、そういうことを考えなければいけない気がする。