イノベーションと改良との違いを決めるモノは何か

イノベーション行動科学の中にあるイノベーションについて記述によれば、

イノベーションは後付けであると、ばっさり切ることもできる。
イノベーションというのは、基本的に我々が決めることではない。
ちょっと後の世代の人が、「あれはイノベーションだった」と言う。
今これがイノベーションだというのは、語義矛盾。

改良を重ね重ねていくと、同時代的に見ればただの改良改善だが、後日見るとイノベーションかもしれない。
逆にイノベーションだと銘打って打ち出される製品サービスも、後日ただの改良に過ぎないと格下げされるかもしれない。

もっといえば、イノベーションも今では当たり前に過ぎない。もっといえば、今の当たり前は多くのイノベーションや改良の賜物なのだ。

とすれば、イノベーションと改良との差を今決めるモノは何か。

おそらく、投入コストとリターンの関係でよいのではないか。

 投入コスト<リターン  は 改良
 投入コスト<<<リターンが イノベーション

同じ製品を作っている会社が提供する新製品がA、B二つあるとすると

A: 投入コスト<リターン    →改良品
B: 投入コスト<<<<リターン →イノベーション製品

 が、Bの中で、ある部分をちょっとだけ変えだけなのでコストはほとんど掛からずだけど売上もそこそこ上がった場合はどうだと問われるかもしれない。

 しかし、これはイノベーションになる。なぜだろうか。そんな少ないコストで売上が上がるとしたら、顧客のインサイトやニーズに響いているはずだ。逆に言えば、莫大なコストを掛けたが売り上げがあまり上がらないものはこれまでの製品といかに異なっていようが、ニーズやインサイトの視点から見れば改良に過ぎない。

 注意すべきは、少数の顧客の心に響くものであっても、それが投入コストを大きく上回らない場合(すなわち、顧客数が伸びない場合)である。そのようなものは、個別企業からも、社会的に見ても改良品にしか過ぎない。が、顧客数を伸ばす工夫ができ、実際伸びればイノベーション品に格上げされるであろう。

 インサイトやニーズに響くものでなければならないが、コストをどれだけ掛けて良いというわけではない。インサイトとコスト。この二つからイノベーションと改良の差異が決まると考えたい。