創造的借用とはなにか

ビジネススクール流知的武装講座,「先人の知恵に学ぶ「創造的模倣」の方法論」(2002.12.16)


ビジネス制度のイノベーションは、これまでになかったまったく新奇なものであることはまれで、その時代のその業界では新しいものではあっても、ほかの世界、ほかの業界、ほかの時代によく似た制度があったという例が多い
 新しいビジネス・システムは、ほかの業界の制度からヒントを得たものであることが多い。このようなイノベーションの仕方を創造的模倣あるいは創造的借用という。創造的借用のもっともよく知られている例は、神戸のワールドのビジネス・システムである。同社のビジネス・システムは、ワールドの製品だけを現金で仕入れて売るオンリーショップを利用してファッション衣料販売のリスクを減らそうとしたものである。このアイデアは、家電業界のナショナル・ショップ店から借用されたものである。ナショナル・ショップ店のアイデアは、資生堂のチェーンストアから借用されたものである。
 創造的模倣のためには、さまざまな時代のさまざまな分野の事例を知っていることが重要である。内外のビジネス・スクールでケース・スタディーが重視されるのは、さまざまな事例の中に、将来の創造的借用の種が隠されているからであると私は見ている。もちろん、それだけがケース・スタディーの狙いではないが、ケース・スタディーの大きな効用であることは否定できないだろう。

創造的借用を上手に行うためには、留意が必要だ。第一の留意点は、制度の生成と進化の歴史を詳しく知ることである。制度や慣行は、生成当時の時代の要請に応えて生み出され、さまざまな問題に対応するように進化していく。制度の歴史を調べていくと、その制度がどのような弱点を持っているのか、その弱点を克服するために先人は、どのような知恵を使ったかを学ぶことができる

創造的模倣戦略―先発ブランドを超えた後発者たち


日本文化の模倣と創造―オリジナリティとは何か