アイデアの発想

商品企画のシナリオ発想術―モノ・コトづくりをデザインする (岩波アクティブ新書)


p12
 我々が日頃使っている道具すべてが、機能性と情緒性(あるいは情報性)をあわせて持っているのが分かる

p13
 機能性と情緒性の二つの要素の棲み分けは、時代とともに変わってくることもある。

p14
 すべての道具はモノとコトによって成立している。“椅子”という名詞は、目に見え、触れることができる実態あるモノを表す。これに対して“座る”という動詞は、コトである行為を表す。そのとき、じつはいろいろな“座り方”があるところが目のつけどころなのである。その“座る”は「やさしく」なのか「楽しく」なのか、あるいは「象徴的に」なのか。ここに未来に対して新しく提案できる要因を発見することができる。つまり、副詞的な働きが動詞の“座る“にかかり、意味を変えるからだ。
 今度は橋をデザインしてみよう。橋のコトは“渡る“である。「ロマンティックに渡る」は、橋のデザインにある機能・情緒の二面性を付与したことになる。副詞を変えることで多様な渡り方が導き出せる。「早く渡る」のように効率を優先させるなら“橋”にこだわらず、「船やトンネルで渡る」でもよいわけである。あくまでも既成の概念にとらわれないことが大切だ。

p.29
 モノをつくる側もそれを使う側も、どのように使ったらもっとも満足できるかを暗黙のうちに頭の中で描こうとしているものだ。実際に使われるシーンは多様で、絞りきれるものではないが、そのものにとって面目躍如たる使われ方があるはずだ。…………。
 使われるシーンを描くには、商品である…………のコンセプトを十分に理解しておく必要がある。

who   誰が    人物
when   いつ    時
where  どこで   場所
what   何を    事件・物事(イベント)
why   なぜ    原因・理由
how   どのように 方法・模様 →気軽に、気にしないで
cost   いくらで  価格

5W1H+C→コンテクストを作り上げる要因ではないか。コンテストメーキングファクター(CMF)

「渡る」 → どこを → 『川』→[川を渡る]→誰が・なんのために

  ●→『近隣の住人』『生活のため』→[近隣の住人が生活のために川を渡る]
  ▲→『外部の人』『観光のため』 →「外部の人が観光のために川を渡る」


 ●→[近隣の住人が生活のために川を渡る]→いつ→絶えず(いつでも)→[近隣の住人が生活の必要に応じて川を渡る]

 ▲→「外部の人が観光のために川を渡る」    →日中・観光シーズン→[観光客が観光シーズンの日中に川を渡る]

ここまででコンテクストの基本が形成される。
そこで、”渡る”というコトを実現するモノをこの核コンテクストに沿って作り出すことになる。
しかし、ここで注意するのは、
 動詞に副詞を付けてコトにバリエーションを付けて、基本コンテクストを多様化する。
  ●[近隣の住民が生活のために快適に川を渡る]
  ▲[観光客が観光の一部として川を楽しそうに渡る]

 多様化されたコンテクストのもとで、名詞を考えるとともに、その名詞に付す形容詞も考える。
  ●→まっすぐに伸び、お年寄りや運転に未熟な人で木もなく渡れる、運転しやすい
  ▲→近隣の観光名所と一体になった歴史を感じさせる形状で眺めのよい橋。眺望のよい場所に作られ、橋の周辺にバスなどが駐車できる大型駐車場、そこには地域の歴史などの解説が付された掲示板が設置されている。

p42

イデアやコンセプトを発想するポイント

1)発想するには、まず問題意識をもつこと。(1)責任感・義務感から、(2)切迫感・切実さから、(3)愛・奉仕から、(4)充実感・満足感から、(5)興味・関心から、そして(6)楽しみ・ゲーム性などから、動機は生まれる。

2)過去、現在そして未来にかけて、社会全体をマクロ的な視点で捉えると同時に、自らの身近な生活も詳しく観察する。

3)アイデアを発揮すべき対象(物)に対して、客観的な情報を収集し評価するとともに、自ら素直に感じたことを主観的な情報としてとらえる。

4)問題発見や着想の方法には、メタファ、動詞型発想など、多くの発想法がある。しかし、使い馴れた方法を基本に、自分流に発展させる

5)「三不」による問題発見は、不安を安心に、不満を満足に、そして不思議を納得に向けて解決できる。その解決方法は「関係づける」「比喩」などを適用する。

6)提案が生活および社会の質的な向上をもたらすように、発想とその評価をくりかえし、まとめていく。

7)コンセプトを具体化するに際して、技術面や、開発面、販売面なども考慮し、発展的に発想する。

赤や青、強調は私が付けた。