業務フローを書いてはいけない

もちろんフローを書いてはいけないということではない。しかし、業務フローを書こうとすると、まず今の業務をあまりに強烈に前提としておいて、ああでもない、こうでもないと考えてしまう。確かに、時には突破(ブレークスルー)できるアイデアが浮かぶこともあるのだが、

 だから、手を動かしながら考えるビジネスアイデアに書かれているように、何かが移動することをフローとして捉えることが重要だ。

1.A4の用紙の真ん中に自分と書いて丸で囲む。ついで上方にお客と書こう。そして矢印を書く。

2.その矢印の横に動かすべき(動かしたい)モノやコトを書こう。たとえば、本。まず本を売りたいと考えるのだ。

3.次に買う人はどうやって買うのかを考える。

4.お客から自分へ矢印。 どうやって来るのか。徒歩の移動。ネットへのアクセス。他はないのかをまず考える。ここでブレスト。

5.そしてそのアクセス手段一つひとつに対して、どんなコストがかかっているかを考える。

 たとえば徒歩来店。お客が来るという行動に対してお店は、自分の存在を知らせしめる様々な出費をしている。 駅前という好立地にあるなら地代。大きな看板(広告費)。滅多にないが新聞広告。こうやって顧客のアクセスを確保するために様々な出費をしている。

 もっと直接的であれば、そうポイント制。自分の店で買ってくれたらポイントを上げると言うことでアクセスを確保する。

 これで終わりではない。

6.店に来てくれても買わないかもしれない。お目当ての本がなければ買わないかもしれない。が、それでも平積みに目がいき、買うかもしれない。ここで必要なのは、売れ筋の本の確保と、ディスプレイのうまさ。では、この場合に必要となるコストは何か・・・・

 等々。

 もちろん徒歩での来店だけではなく、他の方法にも目を向けなければならない。

 こうやってできる限り思考の枠をゆるめてみることが必要だ。さらに、ゆるめるには本屋あるいは本という枠組みを外す必要がある。今隆盛しつつある電子ブック。遅かれ早かれかなり低価格での販売が進み、リアルの本屋や本に対する需要が激減するかもしれない。しかし、紙で読みたいという人がいるかもしれない。電子ブックかが進めば紙の本は逆に高くなるかもしれない。そうなると、本屋は出版センター化するというのはどうだろうか。デジタルカメラができて写真の現像は壊滅した。しかし、今ではデータをカメラ屋に持ち込んで、プリントアウトする人が多い。ならば、電子ブック用のデータを使って本の作成をするというのが考えられる。ビジネスとして成り立つかどうかは微妙なところであるが、印刷所と提携するというのもいいかもしれない。

 いや。その前に万引き対策。今のような立ち読み試読システムは、早晩維持できなくなるだろう。本の配送センター(そこで受け取れば送料無料)としてしか生き残れないかもしれない。配送センターならば、本だけじゃなくて他のものの配送もすればいい。文房具の荷受所として等々。配送料を軽減するためのセンターとなる可能性はある。もちろんコンビニとの競合をどうするかを考えなければならないが。

イノベーションと改良との違いを決めるモノは何か

イノベーション行動科学の中にあるイノベーションについて記述によれば、

イノベーションは後付けであると、ばっさり切ることもできる。
イノベーションというのは、基本的に我々が決めることではない。
ちょっと後の世代の人が、「あれはイノベーションだった」と言う。
今これがイノベーションだというのは、語義矛盾。

改良を重ね重ねていくと、同時代的に見ればただの改良改善だが、後日見るとイノベーションかもしれない。
逆にイノベーションだと銘打って打ち出される製品サービスも、後日ただの改良に過ぎないと格下げされるかもしれない。

もっといえば、イノベーションも今では当たり前に過ぎない。もっといえば、今の当たり前は多くのイノベーションや改良の賜物なのだ。

とすれば、イノベーションと改良との差を今決めるモノは何か。

おそらく、投入コストとリターンの関係でよいのではないか。

 投入コスト<リターン  は 改良
 投入コスト<<<リターンが イノベーション

同じ製品を作っている会社が提供する新製品がA、B二つあるとすると

A: 投入コスト<リターン    →改良品
B: 投入コスト<<<<リターン →イノベーション製品

 が、Bの中で、ある部分をちょっとだけ変えだけなのでコストはほとんど掛からずだけど売上もそこそこ上がった場合はどうだと問われるかもしれない。

 しかし、これはイノベーションになる。なぜだろうか。そんな少ないコストで売上が上がるとしたら、顧客のインサイトやニーズに響いているはずだ。逆に言えば、莫大なコストを掛けたが売り上げがあまり上がらないものはこれまでの製品といかに異なっていようが、ニーズやインサイトの視点から見れば改良に過ぎない。

 注意すべきは、少数の顧客の心に響くものであっても、それが投入コストを大きく上回らない場合(すなわち、顧客数が伸びない場合)である。そのようなものは、個別企業からも、社会的に見ても改良品にしか過ぎない。が、顧客数を伸ばす工夫ができ、実際伸びればイノベーション品に格上げされるであろう。

 インサイトやニーズに響くものでなければならないが、コストをどれだけ掛けて良いというわけではない。インサイトとコスト。この二つからイノベーションと改良の差異が決まると考えたい。