観察だけじゃなくて、実験も大事かもしれない

 私のエントリーに対する今泉さんのコメントおよびエントリー「すべてが円環を描いた!」(これはshibaさんのエントリー「サービスサイエンスからの輪」経由で知りました)に触発されて書きます。ありがとうございました。

 人類学とかエスノグラフィーという,フィールド(顧客による製品使用やサービス消費の場)で観察をして、対象にできるだけ影響を及ぼさないようにしながら厚い記述をし、そこから顧客の真意や洞察を抽出するという方法も十分面白い考え方だが、その他の方法はないのだろうか。


 コメントで取り上げられたレポートの中に、「New retail ventures — such as the concept stores of L’Oréal and Sony —laboratories where store employees are trained to observe shopping behavior」という記述があった。これはアンテナショップではないかと思える代物だが、潜在的な顧客の発見ではなく、消費者行動を観察するように従業員を訓練する実験室にするという点が面白いし、そこがアンテナショップとは異なる。
 

 しかし、この実験室という言葉から以下のようなことを連想し、フィールド観察アプローチとは異なるアプローチがあるように思えてきた。

 ストアを、従業員を訓練する場ではなく、従業員が実験を試みることができる場として捉えられるのではないかということだ。仮説証明型実験か、仮説発見型実験かに関わらず、暫定的な仮説をもってストアで顧客と接し、そして顧客の反応を仮説とつき合わせて仮説を鍛え上げる。そのような考え方や手法を、フロントラインの従業員に身につけさせることが、これからは必要になるのではないだろうか。
 

 研究所や工場などで実験を重ねるエンジニアを排出するのが工学部なら、実験的な姿勢や方法を使いながら顧客を観察し時にはともに創造を行えるような知識創造型フロントラインをどのようなところで教育、育成できるのかを考えなければならない。最近、米国ではビジネススクールから、デザインスクール(スタンフォード大学D-SchoolではIDEOが重要な役割を果たしている)に重心を移しつつあるようだ。さらに一歩進んで、ストアエンジニアとかフロントラインサイエンティストとかを教育・訓練する学校が出現してもおかしくないだろう。これは大学などの教育機関に委せず、企業大学や研修を業とする企業が引き受けるかもしれないが。 


1/8 《追記》
 同様の内容が、shibaさんと澤田さんの間でやりとりされていたのを思い出し、探し出しました。
IBMのサービス・サイエンス〜Researchとethnography(仮説生成的なアプローチ)のエントリーとコメントを参照あれ。


1/8【追記】 
もしかしたら、鈴木氏の考え方が実験−証明型思考なんじゃないかとふと気がついた。読んでないので何とも言えないが、メモとして残しておきます。読んだら報告します(たぶん)。
鈴木敏文の「本当のようなウソを見抜く!」-セブンーイレブン流「脱常識の仕事術」

鈴木敏文の「統計心理学」―「仮説」と「検証」で顧客のこころを掴む

鈴木敏文 考える原則