間接互恵性

【英語で読み解くサイエンス! 創刊号】『 評判を落としてはならぬ 』 2004/11/29

◆内容解説

それは、
「間接的互恵性」と「ただ乗り」という言葉です。

「間接的互恵性」とは、AがBに利他的に振る舞った時、そのAの行動を知った第三
者CがAに対し利他的に振る舞い、Aの利他行動が報われるという仕組みを指します。

              協力     恩恵
直接的互恵性(2人)   A――→B  B――→A
              協力     話す(評判)   恩恵
間接的互恵性(3人以上) A――→B  B――――→C  C――→A

「ただ乗り」とは、「複数の人々の協力によって生みだされた利益を、協力すること
なく亨受する」ことを指します。たとえば、自分はPETボトルをリサイクルに出してい
なくても、リサイクルされたPETボトルでジュースを飲むことができますよね。

協力的行動を支えるためには、この「ただ乗り」を罰することが重要です。そのため、
間接的互恵関係から排除するぞっ!と「脅し」をかけてみるわけです。そうすると、
「ただ乗り」していた人たちは協力的になってくるのです。突然、「PETボトルをリ
サイクルしない人はPETボトル飲料を購入してはいけません。」って言われたら、多く
の人がリサイクルを始めるんではないでしょうか。(規制が難しいのが現実ですが…)

評判のいい人がこのような「脅し」という懲罰を「ただ乗り」に加えても、評判は下
がりません。「脅し」をすれば社会の協力関係は維持できます。なおかつ、その人の
評判は下がらないわけですから、懲罰者個人も恩恵を受けることができます。

バイオウェーブVolume.437 issue no.7063 27 October 2005

間接的互恵性の進化 進化
Evolution of indirect reciprocity
自然選択とは従来、他者を犠牲にして自身の資源を最大にする、強く利己的な者に有利に働くものと考えられてきた。しかし、ヒトの社会をはじめとする生物学的システムの多くは、利他的で協力的な相互作用を基盤として形成されている。自然選択はいかにして非利己的な行動を後押しできるのだろうか。これまでさまざまなメカニズムが提唱されてきたが、近年、自分が誰かを助ければ、別の誰かが自分を助けてくれるという間接的互恵性に関する分析が詳しく行われるようになってきた。間接的互恵性によって協力が進化することにより、評判の形成、道徳的判断、そして増大し続ける認知要求との複雑な社会的相互作用が生まれるのである。
ハーバード大学(米)、M A Nowak
ウィーン大学および国際応用システム分析研究所(オーストリア)、K Sigmund